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コップの中に見える泡と物理

杉山研究室

2018-01-01

炭酸水やビールなどの発泡飲料に含まれる泡は、飲み物の「のどごし」を決める官能因子です。乾いた喉を潤す手を休め、コップの中をじっくり眺めると、大小様々な物理現象を観ることができます。

例えば、コップにソーダ水を注ぐと、コップの壁についた微細な「キズ」から気泡が発生します。液体に溶けた二酸化炭素が気体となるためです。ソーダ水の気泡はあっという間に500μm程度の直径に成長し、液体と気体との密度差により浮上すると、すぐに飲料の外へと抜けていきます。

溶存気体の種類を変えると、気泡の成長と浮上の様子は別ものになります。左端の図は、窒素が溶解した飲料をコップに注いだ写真です。炭酸飲料と比べて、気泡は寸法が1/10ほど(直径50μm程度)にしか成長せず、ゆっくりと浮上します。無数の気泡が飲料中に長く留まるため、クリーミーな味わいと一緒に、気泡の集団が織りなす模様の動く様を堪能することができます(左から2つ目の図)。私たちはこの「コップの中の模様」を成す流体の動力学を調べ、「味噌汁の模様」とは別の浮力由来のカラクリにより発現することを明らかにしました。

窒素飲料中の気泡が小さいままに維持されるのは、溶存気体の量や種類が要因です。さらに、飲料に含まれる固形成分などが気液界面に吸着・脱離することに起因した「気泡同士の合体抑制効果」(右端の図)も、要因の一つと考えらます。これらの影響因子について、私たちは実験や数値計算を駆使して調査し、飲料に潜む力学法則を探求しています。

気泡を含む流れは飲料に限らず、発電施設の熱交換機や水処理施設の水質浄化装置など広く工業的に利用されています。私たちは、基礎研究により得られた知見を活かし、生活を支えるインフラなどの社会基盤技術に貢献する応用研究にも取り組んでいます。

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