最新研究情報


2016/11/1

硫化水素が超伝導の最高温度を記録 その構造に迫る

清水研究室

硫化水素(H2S)は人体には有害なガスですが、超伝導研究には重要な役割を担うことになるかもしれません。近年、ドイツのグループが硫化水素に150万気圧という超高圧をかけて、203 K(-70℃)の超伝導転移温度(Tc)を報告しました。これはこれまで銅酸化物超伝導体がもっていた記録を30度以上うわまわる温度です。しかし、発見の一方で、超伝導体の正体・・・高圧力でどのような物質が生成されてこのような高い温度の超伝導を示しているのか・・・は不明でした。

 超伝導の同位体効果が観測されたため、Bardeen-Cooper-Schrieffer (BCS) 理論で説明できるいわゆる「従来型」超伝導であるということが示されました。従来型の超伝導の場合、高いTcを得るためには硬く軽い元素を使うというレシピがあります。水素は最も軽い元素ですから、硫化水素の中の水素が高いTcの鍵を握っていると考えることもできます。

 さて、この超伝導の正体を明らかにするために、我々の研究室はドイツのグループと協力して、大型放射光施設SPring-8で強力なX線を使用して、硫化水素の超高圧力下の結晶構造を調べました。そして、硫化水素(H2S)は高圧力下で分子解離して、図に示すような構造のH3Sがこの超伝導の正体であることをつきとめました。これまで高いTcを示す超伝導体として注目されてきた銅酸化物超伝導体は、「従来型」ではない超伝導体です。このH3Sの超伝導の発見で、従来型超伝導にも再度注目がされるようになり、新しい高温超伝導体の探索がすすめられるものと期待しています。