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2017/1/4

金属ガラスの構造若返り現象の解明と制御に成功

脆くなったガラスや磁気特性が変化したガラスを回復させる

尾方研究室

 金属ガラスは長周期規則構造(原子が規則的にならんだ結晶構造)をもたないランダムに近い原子配列構造を有する金属材料で、高強度、高硬度で広い弾性変形領域と極めてたわみやすい性質をもった特異な金属材料です。また200~400℃程度の比較的低温で水飴のように粘性流動を示すことから、原子レベルでの平滑性をもった精密成形加工が可能であるという特徴も有しています。このような優れた特性から、次世代のスマートフォン等の小型電子端末分野等のケーシング、タッチセンサー、スイッチング、特殊ネジ材料などへの適用が期待されています。

 しかしながら、このような金属ガラスでは、低温での熱履歴や成型加工等によってばらばらに配列した原子が構造緩和し、一部再配列することで脆化するということが問題となっていました。この構造緩和現象はエネルギー的に安定な方向への変化であるため、一旦緩和して脆化した金属ガラスは自発的には元に戻すことはできず、再溶解して一から作り直すしかないと考えられていました。また構造緩和は脆化等の劇的な特性変化をもたらすにもかかわらず、目視はもとより一般的な構造解析(X線回折等)や超音波探傷でも検知することができない微細な現象でした。

 研究グループでは、一旦緩和させて脆化した金属ガラスをガラス構造特有の粘性流動が発現する温度(ガラス遷移温度とよばれ、通常融点の半分程度の温度)直上で極短時間熱処理した後、再度急冷することによって、そのガラス構造を延性に富んだ未緩和構造に逆戻りさせる現象(これを構造若返り現象と呼びます)を実験的に示しました。そして、その現象が起きる機構と条件を分子動力学シミュレーションによって理論的に説明し、その制御指針を構築することに成功しました。

Ref.[1] M.Wakeda, et al., Scientific Reports, 5 (2015), 10545.

   [2]N.Miyazaki, et al., npj Computational Materials 2 (2016), 16013.


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