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2017/02/01

細胞が力を感知するメカニズム

−力学環境に依存した細胞機能の謎を解く−

出口研究室

 私たちの体を構成する細胞の機能は「力学環境」に依存して調節されています。ここで言う力学環境とは、例えば細胞が存在する場所の硬さや3次元微細形状が挙げられます。これらの細胞周囲の力学的な要素から影響を受けて、細胞は形態や構造を変え、かつ細胞機能を担うタンパク質シグナル伝達や、ひいては関連遺伝子の発現の仕方が変わります。私たちのグループでは分子生物学と力学解析・計測の独自技術の併用を主たる研究手法として、力学環境の変化に起因する物理的な力の負荷を細胞が感じ取るメカニズム(背後にある物理メカニズム、および責任分子の同定とその活性化メカニズム)の解明に取り組んでいます。

 細胞が力を感知するメカニズムの一つとして、「細胞内収縮力の“設定値”の変化」があります。増殖能を有した多くの細胞種は常に収縮力、つまり自ら縮まろうとする力を発生し続けています。興味深いことに、この収縮力は細胞種ごとにレベルの定まった設定値があるようです。力学環境の変化に起因して細胞に外力が負荷されると、それは細胞というシステムにとっては外乱としてはたらき、細胞内収縮力には設定値からのずれが生じます。細胞はこのずれ、ひいては自らが受け取った外力を感知し、変動の原因となった周囲の力学環境に適応すべく機能的・構造的応答を起こします。

 最近、私たちはこの細胞内収縮力を可視化・定量評価できる技術を開発しました。写真は培養細胞が集団運動を行うときの、個々の細胞内における収縮力の時間変化を解析したものです。この技術(細胞収縮力アッセイまたはトラクションフォースマイクロスコピー (traction force microscopy)と呼んでいます)を基礎とし、現在はどの遺伝子・タンパク質がどのようにこの細胞内在性力学量の設定値の調節に関与しているかを調べています。また、これらの現象を制御できる化合物のスクリーニングに基づく創薬研究にも取り組んでいます。


出口研究室