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2017/10/01

自己組織系を基盤とするBio-Inspired化学工学

~分子の顔が見えるChemical Engineering Scienceを目指して~

教授 馬越 大  准教授 岡本 行広  助教 菅 恵嗣

生物を対象とした化学工学を基盤に据え,生体系を発想の原点とした化学工学(Bio-Inspired 化学工学)の創成を目標としています.生体系では,細胞膜に代表される「生体膜」が物質移動や物質変換の要として機能する反面,系が複雑であるため,その機能の全貌解明には至っていません.一方,工業プロセスでは各種の「人工膜」が各種単位操作を制御するツールとして開発されてきましたが,生体膜にみられる高度な分離を実現するためには,更なる研究開発が必要です.当研究グループでは,自己組織系をキーワードとして,両親媒性分子(界面活性剤)から成る自己組織膜を「Bio-Inspired膜」と位置づけ,自己組織化膜を「場」とした「分子の振舞い」について解明し,将来の科学技術の発展に貢献したいと考えています.

 (1) 自己組織化膜のナノ・ミクロ物性評価

リポソーム膜(またはベシクル膜)は,水中で極性・非極性環境が約5 nmの膜界面(ナノ膜界面)に秩序高く凝縮された二分子膜構造を形成します.膜の「ナノ・ミクロ物性」を解析するための方法論について開発を行ってきました.様々な膜組成(リン脂質,脂肪酸,界面活性剤など)や環境条件(温度など)における2次元膜の相図に基づいて,分子認識・変換に適切な「場」としての自己組織化膜のデザイン手法について研究しています.

(2) 自己組織化膜による分子認識・物質変換

自己組織化膜は,ゲスト分子を表層提示する事で新しい秩序構造を形成する点に特徴があります.デザインしたリポソーム膜は,各種バイオ分子(アミノ酸,アミロイド性ペプチド,一本鎖RNA分子など)を選択的に認識し,それらの高次構造・機能を制御できます.近年では,アミノ酸(Trp,His)の不斉認識(分離度(L/D)>104)の誘導に成功しています.また,膜界面の不斉疎水場を活用する分子変換反応の制御にも挑戦しており,リポソーム膜界面や界面活性剤ベシクルの膜表層では選択的な物質変換反応が達成される事を報告しています.


馬越研究室HP: