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2018/04/01

「透明マントとメタマテリアル」

教授・真田篤志

巨大な質量を持つ天体の周りでは光は曲がって進みます。相対論によれば、これは天体の周りの空間が座標変換を受けているために起こる現象です。もし、日常の空間に任意の座標変換を施すことができれば、光の軌道を自在に操ることが可能となるでしょう。

 

例えば、物体の周りの空間に座標変換を施し、背後からの光を迂回させて観測者に届ければ、観測者には物体の後ろの風景が見えるようになるはずです。このとき物体は隠れて見えなくなります。これが透明マントの原理です。

 

我々の研究室では、このような「透明マント」の実現を目指して研究を行なっています。理論的には、空間への座標変換は、その空間を物性が制御された媒質で埋めることで等価的に実現可能です。この媒質で物体を覆うことで、透明マントが実現可能です。

 

この座標変換と等価な媒質の実現には、テンソルパラメータと呼ばれる材料定数と、その分布を制御しなければなりません。また材料定数の波長依存性の制御も必要です。このように高度に操作された媒質は、残念ながら自然には存在せず、またこれまでのところ化学的にも合成されてはいません。我々の研究室では、この媒質を、波長に比べて小さい金属などの材料片を原子分子に見立てて配列することで、人工的に構成することに挑んでいます。この人工媒質はメタマテリアルと呼ばれています。

 

これまで、我々は金属の微細構造を配列したメタマテリアルにより座標変換を実現する透明マントの構成理論を構築し、周波数がギガヘルツ(1ギガヘルツは109 = 10億ヘルツ)のマイクロ波帯で透明マントの実証実験に成功しました。この透明マントは動作波長を限らず非常に低損失でかつ広帯域に動作するため、可視光域においても文字通り「透明な」透明マントの実現法として期待されています。


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