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光と物質の相互作用の新奇な増強機構

― 高品質半導体薄膜で桁違いに高速な光応答を実現 ―
教授 伊藤正、准教授 芦田昌明、招へい教員 一宮正義

2010年03月01日

 光と物質の相互作用の研究は、物理学の最も重要な課題の一つですが、光通信技術の発展にも欠かせないものです。増え続ける通信量に対応すべく、光で光信号を制御する超高速全光スイッチが切望されていますが、高いスイッチ効率と高速応答は一般にトレードオフの関係にあるため、特に室温でこれらが両立するデバイスの実現が難しく、新しい材料や物理機構がこれまで探索されてきました。本研究グループは、真空蒸着法の1つである分子線エピタキシー法でI-VII族化合物半導体CuCl(塩化第一銅)の高品質薄膜を作製し、励起された電子状態の波である励起波動と光波動が数波長の距離に渡って相互作用できるようにしました。上図に示すように、通常、物質励起波動の広がりに比べ、光の波長はずっと長いため、励起波動は光波動の空間的変化をほとんど感じません。相互作用の強さは概ね両者の積で決まるため、波として正や負の値を取る上位の状態より、空間構造のほとんどない、一番下位の波動状態(黄色の波)が光と良く相互作用すると考えられています。一方、下図の高品質薄膜の場合、ある程度厚くなっても励起波動は全体に広がります。屈折率の高い物質内では光の波長が短くなるため、お互いに波動としての空間変動を感じ、波動として形の合うもの同士が強く相互作用します(黄色で表した下から4番目の波動が光と強く相互作用)。
本研究成果はこのような物理機構に基づいています。その結果、特定の膜厚で光と電子励起状態の相互作用が特異的に強くなり、励起状態が素早く光となる、新しいタイプの超高速現象を明らかにしました。従来に比べ3桁以上も高速な光応答速度を実現しています。
 この機構では、室温の熱擾乱で電子励起の波が乱されてしまうより速く光スイッチ動作を完了することが原理的に可能であるため、将来室温で効率的に動作する超高速光ゲートデバイスの実現が期待されます。
 本研究は、大阪府立大学石原一教授の理論グループと共同で行ったものです。

伊藤研究室ホームページ

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