メッセージ

大学院基礎工学研究科・基礎工学部の目指していること

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基礎工学研究科・基礎工学部は、「科学と技術の融合による科学技術の根本的な開発、それによる人類の真の文化の創造」を理念に掲げ、工学の基礎となる学理の追求から、それらの体系化、技術開発への応用、学際融合に至る教育研究を展開し、常に新しい学術分野を開拓してきました。そして、理学と工学双方の視点を備えた人材を輩出し、科学技術の進歩に支えられた現代社会の発展に貢献してきました。

学部および研究科の名称となっている基礎工学(Engineering Science)は、理工学(Science and Engineering)とは異なり、基礎学理の深化にくわえて理学と工学の両者を融合させること、融合させて新しい研究分野を生み出していくという意味が込められています。私たちは、こうした学際融合を、工学と理学以外の生命科学や医学、情報科学、人文・社会科学の分野にも広げてきました。1961年の学部創設から60年を経て、その努力は大きく開花し、高度化した科学技術の革新や、地球規模で複雑化、多様化する社会的課題の解決において、学際融合が不可欠と認識されるようになり、学理の深化と学際融合の基礎工学への期待が高まっています。現在、本研究科では、物理と化学の融合による物質創成や、電子デバイスの革新をもたらすスピントロニクス、次世代計算科学を先導する量子コンピューティング、人間と知能システムの共生社会を目指すロボティクス、医療や福祉を支えるバイオエンジニアリング、情報活用の基盤となる数理データ科学など、これからの社会の変革をもたらす独創的な学際融合研究を推進しています。これらは、イノベーション創出を目指す指定国立大学に認定された大阪大学においても、先導的な役割を果たしています。

本研究科は、4学科10コースからなる学部と、3専攻11領域からなる大学院、5つの附属センターから構成されています。その強みは、横串となる数理と情報、物理、化学、生物を基礎とした教育基盤を擁し、多様な専門分野をカバーする研究組織と、異なる専門分野の研究を結びつけ、新たな学際融合分野を創り出す組織力、そして分野間の垣根を意識しない組織文化にあります。これにより、単に先端研究分野を組み合わせた融合教育・研究とは異なり、融合により得られた知見が、個々の専門分野の基礎研究や応用研究に還元され、これが新たな学問の深化と新しい学術分野の創成を生み出しています。既成の学問分野の枠にとらわれない柔軟な思考は、学部や大学院教育、社会人教育に反映されています。このような循環型発展を遂げる基礎工学の教育研究システムは、半世紀以上にわたり、不変の理念のもとで築き上げられてきたものです。今後も、こうした伝統を守りつつ、時代とともに進歩する先端研究や科学技術、社会のニーズを取り入れ、「人類の真の文化の創造」を目指して、基礎工学を更に発展させていきたいと考えております。

基礎工学研究科長・基礎工学部長
和田 成生