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身体と五感のサイバー拡張 知能化プロジェクションで豊かなQOLの実現

教授 佐藤宏介、准教授 岩井大輔、助教 松倉悠、助教 Parinya Punpongsanon

2018-07-01

プロジェクタは映像コンテンツを平面スクリーンに投射する機器です。プロジェクションマッピングは、プロジェクタがスクリーンに対してではなく、奥行きのある建物や物体に対して様々なCG映像を投影することで、形や見えを自在に変えることができり技術です。我々の研究室ではこれらプロジェクションに関係する三次元画像工学を長年研究してきており、最近では我々自身の身体をこの自在に変える対象と考え、福祉やQOLを豊かにする観点から身体のサイズや機能を拡張することに挑戦しています。

手や指、腕の動きを各種センサで計測し、その動きに追従するように仮想の手や指、腕をリアルタイムCGで合成し、プロジェクタで空間に投影します。すると、模型の身体を自身の身体と混同してしまうラバーハンド錯覚が起こり、仮想の手を自身の手、つまりマイハンドと思い込んでしまいます。我々は、この投影されたマイハンドを「Extended Hand」と呼び、様々な応用システムを開発しています。

例えば、手に振戦(しんせん:不随意の震え)のある利用者向けのタイピングインタフェースです。まず、指先の3次元位置をトラッキングし、ユーザがタイプしたいと意図する文字キーを推測します。これにより、別の文字キーが押されたとしても、コンピュータには意図するキーとして変換して入力するようにすることで、利用者は振戦による頻繁なタイプミスを気にする必要がなくなりました。さらに、振戦のある現実の手に代えて、ユーザが望む振戦のない手の動きをコンピュータが再現し投影する、矯正型の身体拡張インタフェースも研究しています。手を伸ぽすことのできない高齢者や車椅子利用者に対しては、電動車椅子に小型プロジェクタとパンチルミラーを搭載したスマート電動車椅子を開発しています。自身の手が伸展し、指差しコミュニケーションを円滑にする新たな福祉モビリティ環境です。我々の研究室では、手だけでなく、温度感覚や嗅覚、触感等、様々な身体感覚を拡張する未来のサイバネティックシステムを目指して研究しています。

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